今日はJR北海道の話題です。
平成29年度の路線別の収支が明らかになりました。
ニュースでも取り上げられていましたが、北海道新幹線が約100億円もの赤字を記録したとのこと。
開業当初の目新しさがなくなり、最近は乗客がずいぶん減ったそうです。
北海道新幹線、赤字の実態は
正確な数字を知りたいと思い、決算書を取り寄せて調べてみました。
※JR北海道はホームページで詳細な数値を公表しています。
https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/index.html
すると、北海道新幹線は昨年度、売り上げが96億円しかないのに経費が195億円もかかっています。
引き算をすれば一年間で99億円の赤字です。
走れば走るだけ赤字。
これはなかなか厳しい。
しかし、私が驚いたのはそれだけではありません。
JR北海道が運行する24路線、このすべてが赤字なのです。
上記の表は路線別に売上と経費、そして損益をまとめたものです。
赤い枠で囲った部分が損益の欄です。
すべてに赤字を示す△マークが点灯しています。
利益を出している(黒字の)路線が一つもありません。
これは驚きですね。
いったい、いつからこんな経営状態だったのでしょうか。
民間企業としては存続が不可能な状況です。
私が普段乗るのは快速エアポートくらいですが、その千歳線も25億円の赤字を出しています。
快速エアポートを利用される方はご存知だと思いますが、いつも満席です。
千歳空港から札幌駅まで約40分。
立ちっぱなしのお客さんも多く、まるで東京の痛勤電車のようです。
海外からのインバウンドが増えている影響でしょうか、大きなスーツケースを抱えてつり革に掴まる外国の旅行者を見ると気の毒になるくらいです。
あれだけお客が乗って赤字なのはなぜでしょうか。
運賃が安すぎるのか?
それとも経費がかかりすぎなのか?
外部の者には実態がよくわかりませんが、まず経営としては成り立っておりません。
経営を司るJR北海道社長の心中を察するに余りあるところです。
JR北海道の経営再建はどうすれば良いのか?
JR北海道はいま全道でローカル赤字路線の廃止を進めています。
しかし上記の表を眺めてみると、実はローカル線の赤字は大きな金額ではありません。
札幌近郊の学園都市線は年間3億円程度、根室線が7億円、留萌線が7億円程度。
北海道新幹線の赤字とは桁が違います。
小さな赤字だから放っておいて良いわけではありませんが、これらと比較すると北海道新幹線の赤字は破壊的な金額です。
いくらJR北海道が国営企業だからといって、いつまでも出血を続けることはできないはず。
赤字を食い止めるため、いや全道の鉄路を守るために、どうすれば良いのか。
北海道新幹線の廃止を真剣に検討すべきだと私は思います。
こう言うと「北海道新幹線が札幌に延伸するまで辛抱だ」との声があがります。
しかし、上記の表をご覧ください。
既存の函館線(函館〜長万部〜小樽)が昨年度、86億円の赤字です。
減価償却が済んだ古い設備でも赤字なのに、ピカピカな新幹線を新規投資で黒字化できるとは思えません。
設備投資で減価償却費が爆増する一方で、旅客数や旅客単価がさほど増える見込みがないからです。
拓銀がカブトデコムに入れ込んで道連れ倒産したことを思い出します。
おそらく新幹線が函館から札幌まで延伸したとしても、赤字が雪だるま式に増えるだけでしょう。
並行在来線の存廃問題も未解決のままですし。
北海道新幹線いらない
当地では北海道新幹線はずっと「夢」と言われていました。
街でキャンペーンを張ったり、子供達に新幹線の絵を描かせてみたり、ファイターズ選手のCMを流してみたり、と。
新幹線と共に北海道に明るい未来が訪れるかの演出が、ずっと続いていました。
そんな中で「北海道新幹線って要るのか?」と私が言うと、空気を読まない奇人変人のような目で見られます。
しかし、利益が出ない限り民間企業として永続はできません。
国の補助金で延命するなら国鉄を民営化した意味が問われる事態になります。
だいたい札幌から東京に行くなら飛行機の方がずっと早くて快適です。
しかもLCCの普及で最近は1万円でお釣りがくるようになりました。
国家のインフラとして赤字覚悟で鉄路を維持する意義は否定しません。
しかし、企業経営としては新幹線が採算ラインに乗ることはないでしょう。
どうすれば良かったのか?
需要が少ないところに新幹線を走らせるのがそもそもの間違いでした。
北海道に新幹線が無いのは政府が意地悪したわけではなく、もともと需要が無かったのです。
しかも、羽田空港の容量拡大や海外からの旅客増など、路線を取り巻く外部環境も変容しています。
社会の変化に合わせて新幹線の計画も修正すべきでした。
一度決めたら遮二無二走り出して止まらないのが日本の行政の悪い仕組みです。
むしろ、札幌〜新千歳空港間や札幌〜旭川間など需要のある路線で高付加価値化を進めるべきだったかもしれません。
自民党の支持基盤である土建屋さんにはトンネルだらけの北海道新幹線が美味しい商材に映っただけで、新幹線開通後の経営のことまでは考えていなかったようです。
今更言っても後の祭りで取り返しはつかないわけですが、こと新幹線だけに赤字のスピードも危機的です。
いずれ、拓銀破綻並みの深刻な事態がJR北海道を襲うことになる可能性があります。
そのとき、JR北海道を公的資金で救済すべきなのか。
赤字ローカル線は廃線にするのに、赤字新幹線は廃線にしないのか。
政治的な判断が求められることになります。
道議さん、知事さんはどう考えているのか、来年の選挙の時にも聞いて見たい気がします。
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