溜まりすぎた役員借入金を解消するため、デット・エクイティ・スワップに着手した話を前回記しました。
デット・エクイティ・スワップとは負債を資本に振り替える手続きのこと。
この結果、資本金が増えて会社の財務体質が改善します。
いわば増資を行うということです。
資本金の金額は会社法に定める登記事項なので、増資は法務局で登記が必要です。
(会社法第576条)
普通は司法書士に依頼するのですが、今回は自分で登記をやってみることにしました。
googleで「DES、登記、自分で」などと検索するとたくさんのページが表示されます。
ところが、手続きキットを販売するホームページだったり、司法書士の広告だったりと、
自分で登記をやってみる人向けの記事が意外と見つかりません。
できれば登記申請書をそのままコピー&ペーストしたかったのですが、そうはうまくいきません。
仕方がないので、自分で調べながら登記申請書を作ってみました。
これから同じ登記を試みる方の参考と自分の備忘録を兼ねて記します。
まずは会社法
まず会社法を読みます。
通常は資本金は金銭で出資しますが、例外的に現物出資が認められています。
DESでは会社に対する貸付金(金銭債権)を現物として出資金に充てるわけです。
私の場合は株式会社ではなく合同会社なので、持分会社の増資手続きとなります。
登記申請書のサンプルは法務省のホームページに掲載されています。
法務省の概要 > 各組織の説明 > 内部部局 > 民事局 > 登記-商業・法人登記- > 商業・法人登記申請
この「3-6 合同会社の資本金の額の変更の登記申請書」にワードファイルがあります。
これを見ながら申請書を書いていきます。
オーナーの役員借入金を現物出資で増資登記する際に必要な書式は下記の5点です。
DES増資登記に必要な書類
- 変更後の定款
- 合同会社変更登記申請書
- 総社員の同意書
- 出資給付証明書
- 決定書
- 資本金の額の計上に関する証明書(出資が500万円を超える時に必要)
増資額をいくらにするか
まずDESで増資する金額を決めます。
増資後に資本金が1000万円を超える場合は法人住民税の均等割額が増えます。
資本金1000万円以下の均等割は年7万円ですが、これが一気に18万円に増えます。
節税を心がけるために資本金は1000万円を超えないようにします。
また増資の登記申請には登録免許税が必要です。
登録免許税は最低3万円、あるいは増資金額の1,000分の7と決められています。
登録免許税が3万円ギリギリになるように増資額を425万円に決めました。
(425万円☓1000☓7=29,750円)
定款の変更
次に必要なのは定款の変更です。
持分会社の社員会議を開いて定款を変更します。
変更するのは資本金に関する記述です。
きちんと社員会議の記録を残します。
変更後の定款は登記の必要書類ではありませんが、実務上は添付するようです。
変更登記申請書を書く
ようやく登記申請書までたどり着きました。
定款の変更した内容を登記申請書に反映させます。
登記の事由は「資本金の額の変更」です。
登記すべき事項に増資後の資本金、と増資を行う年月日
課税標準金額に増資額
登録免許税に必要な金額(後述)
これらを書き込みます。
あとは会社と代表者の住所氏名を記入して会社の実印を押印します。
申請書はA4用紙一枚で足りました。
さらに必要な添付書類です。
総社員の同意書
総社員の同意書は株式会社の総会議事録に相当するもののようです。
出資に係る給付が合ったことを証明する書面
出資が正しく行われたことを本来は検査役や弁護士に証明してもらうべきところ、
代表者が証明することでこれに替えることができるそうになったそうです。
合同会社の場合は社長が出資者を兼ねているため、信用されているのでしょうか。
この証明書には役員借入金のうち、具体的にどの債権を現物出資に充てるのか、
これを詳しく記す必要があります。
通常の役員借入金というと会社の資金が足りなくなった時に社長個人のお金を
適当に会社に突っ込んでいるケースが多いと思うのですが、実はこれではだめで、
上の例のように金銭消費貸借契約を結んで債権を特定する必要があるそうです。
総社員の決定書
合同会社の実務を担う業務執行社員が増資を決定したことを記録した書類です。
社員が何人かいる場合は、各社員の記名押印が必要です。
(※)この場合の社員は会社法上の社員で、従業員のことではない
出資が500万円を超える時に「資本金の額の計上に関する証明書」が必要なのですが、
私は500万円を超えないようにしたので添付しませんでした。
これにより書類が一枚減ります。
もし必要な場合は証明書と総勘定元帳の該当ページのコピーを添付します。
以上の書類を揃えて登記所に持参します。
私の場合は札幌法務局が近いので、窓口にで係員にチェックしてもらいました。
その結果、間違いだらけで法務局と会社を何度も往復しました。
法律的なミスは法務局の係員が教えてくれるのですが、実務的な申請書の書き方は
横の相談コーナーに駐在している司法書士さんに尋ねるように言われました。
司法書士さんというと有料かと思ったのですが、無料でアドバイスしてくれました。
大変ありがたいサービスです。
札幌法務局の場合は特に相談のアポイントメントは必要ないようです。
(但し予約すれば待ち時間が少ないと思われます)
内容の正確性について
この様式で合同会社のDES増資が実際に登記が完了していますが、あくまで素人が
参考としてまとめたもので、法的、実務的な正確性を保証するものではありません。
必要に応じて専門家のアドバイスを受けられるようお勧めします。
以上、私と同じく脱サラ起業して増資手続きを考えている方の参考になれば幸いです。
不明な点はコメントではなく直接メールか電話にてお問い合わせください。
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